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診療契約の内容

民法には、売買契約、賃貸借契約、請負契約、委任契約などの様々な契約についての規定がありますが、診療契約について特に規定を設けていません。
では、診療契約は、法的にどのような性格をもつ契約なのでしょうか。

診療契約は、診療行為を遂行すること自体を内容とする債務を負担するという準委任契約であると明示する裁判例があります(東京地裁昭和46年4月14日判決)。

この裁判例は、重篤仮死状態で生まれた新生児が死亡した事件に関するものですが、診療契約の内容から見れば、出産と他の治療とは異なるところがないとし、「基本的に通常の病気についての診療契約において医師は患者に対し病気を診察治療することを約しうるにとどまりこれを治癒させることまでは約しえないのが通常の事例であり、右契約における医師の債務は特約のない限り前者の行為をすることにあると解されるのと同様、産科医にあっても、かならず児母ともに健全な状態での出産に至らしめる責任を負うことは不可能であって、通常右のような状態での出産に至らしめることまでも約するものではなく、前記のような診療介助を行なうことを約するにとどまると解するのが社会常識上妥当であると考えられる。」と判示しています。

そして、この東京地裁の判決は現在でも維持されており、裁判において診療契約は、このような内容のものと理解されているのです。

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